楽天が携帯電話事業に参入する理由を三木谷社長がマーチャントパートナーへ説明した
1月30日、楽天市場出店パートナー向けのイベント、新春コンファレンスが東京都内で開催された。
そこでの三木谷社長の基調講演の報告である。講演の骨子は3点。第一に、携帯事業参入についてのアップデート。
携帯電話事業参入の背景
①楽天市場の取引の70%超が携帯電話経由となり、携帯事業とEC/フィンテックとの連携が重要になった、
②携帯企業が逆にEC/フィンテックへの参入を進めており対抗する必要があった、と説明された。
そして基本戦略として、
①携帯料金引き下げでEC事業などに消費者の可処分所得がより向かう環境を作りたい、
②携帯事業が創出するデータを活用し、付加価値の高いサービスを提供する、③スモールセルなどを活用したクラウドネイティブな通信ネットワークで差別化する、などの考え方が確認された。
第二に、楽天市場のユーザーエクスペリエンスと生産性改善への取組みが示された。
具体的には、
①RMS(Relationship Management System)強化、
②チャットボット機能などによる消費者とのコミュニケーション機能強化、
③ペイメントソリューションの強化、
④価格計算最適化機能の強化(Price and Inventory Optimization Program)の導入、などのAIによる出店企業への支援機能強化が挙げられた。第三に、ワン・デリバリーと銘打った、自社物流拠点の整備や商品送料の標準化の取組み。
①日本全国に9つの物流拠点を整備するべく、千葉県流山市、大阪府枚方市に新たに自社物流拠点を新設した、②顧客維持獲得や商品販売約定では、簡素かつ一元化された価格体系が重要との認識に立ち、一定額以上の商品注文は送料を無料にする方針が検討されていることが示唆され、楽天市場出店パートナーへの理解と協力を求めた。
グループ内再編について
以上とは別に1月18日、楽天はグループ内再編方針を発表、2月中旬の取締役会議承認を経て実現する運びとなった。
当初の発表と異なり、
①EC事業は会社分割による子会社化を取りやめる一方、吸収分割方式により
②フィンテック事業、
③モバイル事業、さらには④デジタルペイメント事業を子会社化する。
これによって、各子会社の財務の透明性を高めアカウンタビリティを強化、そして②~④の事業の信用評価を切り離すことによって、③や④の財務体質悪化が②に及ばぬようにする意図と見られる。
楽天カードの審査は甘いため、財務体質が悪化しやすい。
そのことへの対応も含まれているのだろう。
さらには、この再編によって、中期的に分離上場するオプションも可能となろう。
株価への影響
ややポジティブ。
まず、新春コンファレンスからは昨年よりもより統合され、かつ具体的な形で強固なプラットフォームを提供する楽天の取組みが示された印象。
ソフトバンクとヤフーが進めるクロスセル戦略に対して、楽天なりの対抗策が昇華されてきたとも言える。
特に、第三のワン・デリバリー戦略が実現できれば、消費者にとってのメリットは大きく、アスクルとの事業連携が遅々としている印象のヤフーのEC事業に対して有効な競争戦略となる可能性があろう。