消費増税など厳しい材料が多いなか「コスト削減」「海外需要取り込み」に注目

過去 1 年間の小売セクターのパフォーマンスは対 TOPIX でアウトパフォームした。
特に、天候に恵まれ短期業績への安心感が広がった春や、外部環境懸念が高まるな
かで相対的にリスクが小さいとみられた秋に相対的に高い評価を受けた。ただ、弊
社カバーの専門店 13 社のうち過去 1 年間で対 TOPIX をアウトパフォームしたのは 5
社にとどまり、そのなかでもファーストリテイリングは年を通じて高いパフォーマ
ンスを示した。
個別銘柄でみると、過去 1 年間ではファーストリテイリング(9983)が圧倒的なベスト
パフォーマーで、島忠(8184)、ライトオン(7445)が続く。一方のワーストパフォーマ
ーはチヨダ(8185)で、青山商事(8219)、しまむら(8227)が続く。

 

ファーストリテイリングは高い増収率・増益率を確保しており、株価パフォーマン
スの高さは好業績に裏打ちされたものといえよう。図表 5 は、カバー銘柄の過去半
年間(3-8 月度または 4-9 月度)の業績をみたもの。同社は、国内ユニクロ事業の販売
堅調や物流見直しをはじめとした経費抑制、さらに国内ユニクロ事業の売上高・利
益規模を上回り始めた海外ユニクロ事業の高成長持続などにより、カバー銘柄のな
かで同期間最も高い増収率・営業増益率となった。
一方、ワーストパフォーマンスの 3 社(チヨダ、青山商事しまむら)は、同期間でい
ずれも既存店売上が低調に推移し販売不振が目立ち、値下げ増等による粗利率低下
もあって減収・大幅減益に陥っている。

 

、2019 年の専門店をみていくうえで、「EC との競合激化」「人件費増」など
中期的な問題が続くなか、10 月に予定されている消費増税もあり販売の盛り上がり
に期待することも難しいだけに、厳しい事業環境を前提にすべきとみている。
図表 8、9 は、2014 年 4 月の消費増税時の増税前後の小売業売上高の伸び率と株価パ
フォーマンスをみたものである。前回の消費増税時の小売業全体の売上高の動向を
振り返ると、①増税の 2 四半期前から駆け込み需要が発生、その後は増税直後の反
動減と駆け込み需要発生から一巡したところでの反動減があり、②年度ベースでみ
れば増税前年の 13 年度が前年比 2.9%増、増税後の 14 年度は同 1.2%減となった

2019 年に予定されている消費増税に関しては、①増税に際して消費落ち込みを回避
するための各種施策が決定されつつあること、②10 月実施予定という点でこれまで
の 4 月実施時の際と駆け込み需要等の影響が異なる可能性があること、③各社とも
コスト増のなかで販売戦略を組み立てる必要があること、など実際の影響を想定す
るには不確定要素が多い。ただし、弊社では、ひとまず株式市場で「消費増税のな
かで 2019 年は販売の盛り上がりに期待することが難しい」とみる向きが増えると考
えている。
厳しい事業環境を前提としたうえで増益を確保するため、弊社ではとくに 2019 年の
小売専門店の投資テーマとして
労働生産性改善を軸としたコスト削減」
「アジアでの成長やインバウンド需要取り込みによる成長期待」
をあげる。